三種のデブ

思えば物心がついたころからデブが嫌いだった。幼少期に自覚したその薄ぼんやりとした嫌悪感は、年を経て世界の輪郭が広がるにつれてじわじわと存在感を増し、今では心の中の「嫌いなもの箱*1」の中、確かな質感を伴って存在している。それは巨大な鉛玉のように、重く、鈍く、黒光りしながら。

 

*1:嫌いなもの箱の中にはデブの他に『ビジネスマナー講師』や『カリスマ駐在妻』、『自称プロ就活コンサルタント』などが乱雑にぶち込まれている

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いのうえくんのこと

東京では、多くの外国人がコンビニやスーパーでレジを叩いていた。
同級生の兄弟が働いていた地元のコンビニとはうってかわり、コンクリートジャングルにはアジア系からラテン系、アフリカ系まで国際色豊かな顔ぶれが並ぶ。

 

そんな東京砂漠にありながら、近所の小さなスーパーでは、およそ日本人しか働いていない。そしてありがたいことに、高校生バイトを雇っている。

 

 

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真綿の遮光カーテンで首を絞められて死ぬ

初めての一人暮らしで買ったカーテンは、ニトリのベージュのカーテンだった。
青は子供っぽいし、赤は落ち着かないし・・・と頭をひねり、購入したカーテンの安っぽく小汚いベージュ色は、奇しくも実家の母親の肌着の色に似ていた。初めての一人暮らし、母親の温もりが恋しかったのかもしれない。

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いつから勝算のない告白をしなくなったのか


25歳の実感がない。
25歳の実感がないと思い始めてから久しい。

自分が義務教育を終えているらしいことは実感している。男子高校生でもないということもなんとか飲み込んだ(たしか2年ほど前に)。しかし男子大学生ですらないということが納得できない。心底わからない。実感はおろか、おそらく理解もできていない。断固として拒否する。俺は男子大学生だ。くそ男子大学生だ。眠い時に寝て食べたいときに食べる。にもかかわらず、一身上の都合で毎日スーツを着て出社してパソコンを開いたり閉じたり、カフェラテを飲んだりラムネをなめたりチョコを啄んだりなどしている。混乱する。??????

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